2002年5月。

水曜どうでしょう6年の旅の中で釣りバカチャンピオンの栄誉に輝いた男たち4人が「最高の釣りバカ」グランドチャンピオンを決めるべく世界自然遺産の島、屋久島に集合して、釣りバカグランドチャンピオン大会24時間耐久魚取り対決を敢行した。

4人はまず熱帯魚を掴み取りし、次に川エビを網ですくい取りながらなぜか川にはまっての大奮闘。

そして午前10時の対決開始からやっとのことで半分が過ぎたその日の夜10時半、いよいよ新栗生橋の上で第3ステージの「夜釣り」対決が始まった。

第1、第2ステージを終え、日暮れとなりたらふく飯を食い、しこたま酒を飲み、風呂にも二回浸かって全員疲れも隠せない状況で始まった夜釣り対決だったが、最初のうちこそ釣れる気配も見せなかったのに、開始から5時間が経過した午前3時過ぎのこと、それまで一匹も釣れなかった魚が、突如として安田さんとミスターさんの針にかかり始め 入れ食い状態となり男たち4人は我も我もと俄然前のめりになりだした。

だが釣れちゃって釣れちゃって大喜びの安田さんミスターさんを横目に、開始から5時間、橋の上から糸を垂らしっぱなしの大泉洋の竿には1匹の魚も掛からない。

第3ステージ終了までの残り時間が僅かと迫ったその時、大泉洋は自分の苛立ちを小学生のケンカに見立て、突如小芝居を始めるのだ。

キッカケは深夜の新栗生橋の上から安田さんが釣った魚を川にボチョンとリリースしたことからだった。

「おまえよー、釣った魚ボチョンて落とすなよ。

集まってる魚が逃げるだろう?」 大泉洋は不機嫌な小学5年生のていで安田顕にイチャモンをつけ始める。

その瞬間、安田顕はイジメられっ子に見えてきて、音尾琢真には大泉の腰ぎんちゃく的な子分キャラが憑依する。

「おまえなんだ?宮浦小のやつか?おまえ、3組のおんか?」 「あれ?それ栗生んじゃね?」 「そのジャージ栗生んじゃね?」 と数々の名セリフを生み出しながら、釣り対決とは全く関係のないその小芝居がむしろ誰もが忘れられない思い出の名シーンとなっていく。

見るものは大泉洋の見立ての面白さに乗せられて、彼ら4人がことごとく小学5年生に見えてしまうのだ。

「おまえ、宮浦のみすたーか?」 「おまえ本当にオレらと学年同じ?」 「ミスターくん絶対5年じゃねーよ」 「ミスターくんタバコ吸ってんじゃん!くわえタバコじゃん!」 コメントの当り前さが、なぜだかいちいち笑えてしまう。

スタイリスト小松さんのセンスが4人に着せた「ジャージ姿で赤白帽を被っている」というそのビジュアルだけを手掛かりに、大泉洋が始めた屋久島魚取り対決で浮かび上がらせた小学5年生たちの物語が、この企画で一番忘れられない愛すべき物語となった瞬間だった。

「釣りバカグランドチャンピオン大会 屋久島24時間耐久魚取り対決」。

それは水曜どうでしょうが最後の旅を目前に控えたラス前の長閑な旅だった。

ロケ現場には2人のディレクターとタレントだけではなく、スタイリストの小松さんも、そしてずっとロケ現場に来ることなどなかった「水曜どうでしょう」の音効の工藤ちゃんまでもが来ていた。

この旅の裏側を流れていた雰囲気は、文字通り番組に関わったものたちが番組の終わりをそれぞれ静かに噛み締めた朗らかな卒業旅行のようなものだったかもしれない。

そして、この企画が放送された2か月後、「水曜どうでしょう」は、6年間続いた番組に幕を閉じた。

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